2017年01月11日

ようやく村にと


突然テーブルに温かいココアが置かれて、早雪は目を丸くして貴彰を見上げた。
イヤホンを外しながら見上げると、彼はにっこり笑う。
心身ともに疲れた時はココアです。あたたまりますよ?」
…ありがとう…ございます…」
マグカップを包み込むように持ち、早雪は一口飲んだ。
美味しい」
微笑む早雪を満足そうに見て貴彰はキッチンに戻って行く。
貴彰の言う通り、心身ともにあったまったようなホッとした気持ちになり早雪は原稿を書いていた。
タイピングの音と、貴彰がキッチンで立てる音だけが響き、静かだがどこか落ち着く時間が過ぎて行く。
お疲れ様!診療終了~!」
栄太が笑いながら入って来て、早雪と貴彰はお疲れ様でした」と声をかける。
ザンは部屋かい?」
だと思うけど…。あ、私洗濯してたんだった。」
早雪が立ち上がる。
そろそろサラダも出来ますから、ついでに声をかけてみてくださいね」
わかりました」
返事をしながら私物をまとめると部屋に置き、ザンの部屋の扉をノックした。
もうすぐ夕食みたいよ?」
わかった」
扉の向こうで発せられたザンの返事を聞いて早雪は洗濯機に向かう。
さっきまで来ていたシャツとパンツを取り出して自室に干しておいた。

明日、一度東京に戻ることになった」
カレーを食べながら、突然のザンからの報告に、全員驚いた顔をする。
突然どうしたんだい?児童福祉施設で何かあったのか?」
あっちは大丈夫だが、一度戻って来いと院長に怒られた…。あと、こっちに来ても良いと言っている保育士がいて…、話をしてその気があるなら連れて来ようと思う。」
そうなんだ!よかったじゃないか。美桜里さんも喜ぶな」
本当、よかったわね」
じゃあ、その方もここに住まわせてもらうことになるのかな?」
3人が口々に言うと、ザンは頷いた。
ひとまずここに連れて来てもいいか?」
ああ、もちろん!永住するってわけじゃないんだろ?」
ひとまず1年とか滞在して仕事をしてみたいそうだ」
ザンは言いながら立ち上がり、皿を下げはじめる。
早雪とザンが並んで片付けをしているのを見ながら栄太は思う。
ここへ来て1年半。早雪達が来て数日。ようやく村にとっても自分にとっても良い変化が訪れたような気がした。

翌朝、早雪は頭が痛くて目が覚めた。
時計を見るともう9時になっており、寝返りを打ちながら額を押さえる。
(熱でもあるのかしら…)
やや熱いような気もするが、単に疲れているだけかもしれない。しかし、体がだるくて起きられない。
今日はどこかにアポをとっているわけでもないので、少し寝ていようと思った。
昼頃まで寝たり起きたりしていたのだが、悪夢を見て汗びっしょりになって目が覚めた。
さすがに昼になり決定的に体調が悪い事に気づく。
(昨日雨に打たれたせいかなぁ)
起上がれず、布団を抱えて横になっているとノックの音がした。
早雪さん、起きてるかい?」
うん…起きてるけど、ちょっとだるくて」



Posted by mmwen23 at 19:05│Comments(0)
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